アレルギー疾患ガイドブック(1999 東京都)1997年のドキュメンタリー番組・その2

1997年のドキュメンタリー番組・その3


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しのびよる薬害!?~急増するアトピー重症患者~NNNドキュメント97(1/3) 

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 先回、番組中で氷嚢で顔を冷やしていた「清水さん」の2回目の悪化は、何は要因があったはず、と書きました。それについての補足です。

 悪化要因の検索をするにあたって有用なのは、1・日記 2.検査 です。

 日記は、日々の症状の強さが折れ線グラフになっているようなものが見やすいです。わたしは、患者に下記のようなものを渡して持ってきてもらっていました

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 この方は、3枚目に記していらっしゃるように「悪化したときにはアガリクスを飲んで3~4ヶ月すると回復に向かうようだ」と考えていました。私の解釈は異なり「毎年11月(冬)になると悪化して春になると自然に良くなるので、季節が悪化要因だ」です。この方は、冬の無いところで暮らせば、悪化しないということです。

 「そんな無茶な」と笑う方も多いかもしれません。しかし、わたしは真面目に、それがベストの選択肢だと考えます。

 別の方の日記です。

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 この方は、タイの田舎のノイカイあるいはマラッカでとても調子が良かったようです。ということは、そこに住めば、良くなるでしょう

 こういう話をすると、怒り出す人もいました。わたしが悪い冗談を言っているとでも感じるのだろうか?私が自分だったら、家族がアトピーであったら、わたしならそうします。

 別の方です。タヒチで毎日海に入っていたら良くなりました。

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 また別の方です。新居に引っ越してから1~2年、まったく症状が出なかったとのこと。また、スイスに旅行中は治まっていたようです。

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 別の方です。北アイルランドに留学した2年間は調子がよかったです。南に行けばよいというものでもなさそうですね。

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 以上は環境系の悪化要因が関係してそうな例ですが、ほかにもいろいろな因子があります。たとえばこの方は、

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 「取引先の人にしかられた。それで体の調子が悪くなった」とのことです。ストレスが悪化要因ということですね。

 ストレスには、こういうパターンもあります。

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 この人の場合、白内障手術のあとは、一過性にですが症状が治まります。アトピーへのストレスの影響ですが、弱いストレスは症状を悪くしますが、生命に危険を感じるような強いストレス下においては症状が軽くなる傾向があるみたいです。阪神大震災のあと、一過性にアトピーの人たちの症状が軽くなったそうで、神戸方面の皮膚科医には「アトピーの原因はストレスではないか」とおっしゃる方もいます。・・しかし、ストレスっていうのは、大抵の場合一過性のものなので、あまり対策は必要なく自然回復すると思います。職業などで慢性的にストレスに暴露されていて、それが大きな要因である場合は、解除の必要があるかもしれませんが。

 

 環境系の要因には、意外なものもあります。たとえばこの方、

 経過と検査結果から、ネコが疑わしいです。なぜかというと、H10に5月に悪化しているからで、ちょうど抜け毛のシーズンです。5月ごろ定期的に悪化する患者はネコが原因のことが多かったです。

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 ネコのアレルゲンというのは、部屋にネコが居なくなったあとも、一年くらいは活性が残っています。ですから、マンションに引っ越してその日からネコアレルギーの人が具合が悪くなった、問い合わせてみたら、1ヶ月前まで住んでいたひとが、ネコを室内で飼っていた、なんてこともありえます。

 

 環境系の因子と言うのは、細かく特定できれば(ネコとか)、転地・転居しなくても解除できるはずです。ネコは目に見えるから認識しやすいですが、ダニ・カビといった話になると、素人では暗中模索になります。実際に調べてみますと、

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こんな感じです。この患者宅の場合は、和室および敷き布団に多かったので、具体的な対策が取りやすいです(布団買い換えればいい)。

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 こんな感じにダニ密度を減らせます。ピンと来ない方、杉花粉対策をイメージしてください。杉花粉だって目に見えないでしょ?だけど、現実に鼻炎の原因となってるし、マスクとか対策することで少しは症状和らぎますよね?

 で、右下の検査結果のように、対策をとることで、アレルギー値が下がることもあります。

 ただ、専門家が現場を調査しないと、どこをどうしたらいいのかわかりません。しかしこの種の調査には日本人はお金を払いたがらないし、増改築とか布団とか売りつけられるのではないかと警戒する。そして何より、自分が暮らしている環境を他人に徹底的に調べられるのなんて真っ平だ、って方が多いです。

 だから、環境系の悪化因子をそこに住んだまま対策、ってのは難しいです(目の見えないひとが鉄砲を撃っているようなもの)。それなら、いっそ転地転居繰り返したほうがまだ現実的かもしれません。

 

 専門家による調査の例もうひとつ。

このかたは、環境系のカビ(アルテルナリア)単独陽性です。

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 しかし、環境カビを調べてもらったところ、浮遊真菌数も少なく、アルテルナリアの「巣」も見つかりませんでした。ということは、たまたま検査結果はこうであったけれども、アトピーの悪化因子は他にある、ということです。

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 食物も、悪化因子となっていることがあります。しかし、食物の場合は、多くの場合、自覚があります。環境系ほどブラックボックスとなってはいないです。また、摂取してすぐに何らかの症状で表れることが多いです。

 

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 それでも、下記のような例もあります。この方は、大豆アレルギーが血液検査で疑われ、大豆系食品を除去してみました。すると、3週間後あたりから、症状が軽快して来ました。

 食事性の悪化因子の場合、良く食べるもの、毎日のように食べているものは、とくに好物である場合、悪化因子と気がついていないこともあります。

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 下のひとの場合は「家具屋さんに行くと体がひどくなる」という訴えの方で、血液検査でホルムアルデヒドへの反応が陽性でした。このような方ですと、新築への転居は悪化の怖れがあります。 


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 話は変わりますが、風邪を引いたり、軽い感染症は、アトピーの皮疹を少し良くすることもあります。まあ、これは、日記をつけているとそういうことも気がついてくる、って程度の話ですが・・。

 要は、自分が何に反応しているのか、常に意識するといいです。それには日記が有用です。

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 転地・転居が必ずいいってわけじゃありません。下のかたは、ゼミ合宿で悪化しました。

 

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 下の方は「新潟のおじいちゃんち」に行ったら悪化です。

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 下は、渡米すると良くなってステロイド不要になる方です。 

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 アトピーの方々っていうのは、例えていうと、清流でなければ住めない鮎のような存在だと思います。非アトピーのひとは鮒みたいなもんで、適当に濁った泥水のなかでも平気な顔して生きてますが、アトピーの肌のかたは、生活環境が限られる、しかし、その限られたエリア(個々人で異なります)を見つけてそこに居る限りは、普通に生活できる、っていう感じです。

 とくに若い患者の方に、強く勧めたいのは、体力気力や、親の助けがあるなど、生活に余裕のあるうちに、多少一時的に症状が悪くなるかもしれませんが、怖れずに旅行などして、自分の肌がどの土地で、どのような生活スタイルの下でなら、普通に過ごせるのか?を確認することだと思います。

 

 ステロイド依存症は薬害ですが、そこから離脱しても敏感肌は残ります。離脱から年を経れば経るほど、ステロイド外用剤の後遺症である過敏性の亢進は治まり、反応しにくくはなるでしょう。それでも、湿疹が治まりきらない一群のひとはいます。

 最終的にアトピーは生活との闘いになります。生活のため、収入を得て生きていくために、湿疹が出ても頑張り、あるいは、昔酷い目に合ったステロイド外用剤を恐る恐る使いながら、仕事を続けざるを得ない人たちもいます。

 日本は昔ほど豊かではなくなり、不況のため世間のアトピー患者を見る目も冷たくなったかもしれません。

 しかし、ある一定の生活条件下では、自分の肌はまったく健康を取り戻せるのだ、いまは鮎が一時的に濁った池に紛れ込んでしまって苦しいが、自分に合った清流が、この世界のどこかにあるのだということを信じて、そこに向かって、賢く人生設計してください。

 わたしにアトピーは治せないです。なぜなら、アトピーの治療とは、人生設計そのものだからです。わたしは薬を処方することは出来るし、辛いときのメンタルサポートもまあまあ出来ます。上に色々書いたような、悪化要因探しの手伝いをすることも出来ました。しかし、その要因を外すという作業・行動は、本人にしかできません

 それは、わたしがアトピーの診療を離れた大きな理由の一つでもありました。経済的とか家族の問題とか、様々な理由で生活環境を変えることが出来なかった患者のかたがた、わたしは、こういう文章を書いて、あなたたちを批判したり嫌味を言っているのでは決してない。解っていても現実に動けないのは辛いだろう。私もその現実がとても悲しかった。

 わたしは決して強くはない。その悲しみに耐えられなかったのだと思う。

 

 

(追記)ある方からコメント欄へ「海辺の家族」というサイトの紹介がありました。ここのサイト主の方のような人生設計が最善ではないかと思います(注:ここの施設に行くと良くなるということではなくて、あくまで、このサイト主のような生き方がお手本になる、という意です)。




moto_tclinic at 01:15│Comments(0)