アトピー性皮膚炎の標準治療についてのインフォームドコンセント「日本アレルギー友の会」について(2)

標準治療を広めるとはどういうことか。

  

 「いろいろな情報が錯綜しがちな喘息やアトピー性皮膚炎の治療。どれを信頼してよいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。医療現場では現在、専門医の作成した診療ガイドラインによって、最も安全で有効な治療法が確立されています。患者であるわたしたちもこれを理解して標準治療を行うことで、喘息やアトピー性皮膚炎の症状を良くしていくことができるのです。」(日本アレルギー友の会HPより)http://www.allergy.gr.jp/topics/

 注)くどいようですが、わたしは喘息のステロイド治療はまったく問題視していません。ステロイド依存(addiction)という現象は、ステロイド外用薬のもつ表皮バリア破壊メカニズムによって起こります。粘膜では起こりません。

  日本アレルギー友の会と、常任顧問である江藤先生とのコラボによる「正しい治療法・診察法」の動画がyoutubeにありました。アトピー性皮膚炎の「標準治療」のお手本を示す意図と思われます。 塗り方~1


ここをクリックすると動画にリンクします。 

受診例~1

adult

 なおかつ、コントロール不良群は、コントロール良好群よりも多くのステロイド外用剤を使用していました(良好群の総量が中央値で60gなのに対し、不良群は117.5g)。コントロール不良の患者は、コントロール良好な患者よりも多くのステロイド外用剤を使用していたにも関わらず、「コントロール不良」であったわけです。決してステロイドのランクや量が不十分だったわけではありません。標準治療に6ヶ月間従った患者たちだけを対象とした分析ですから。

 動画の冒頭で、友の会事務局長の丸山さんが「友の会の相談でも、ステロイド外用薬が効かないとおっしゃる方ほど、塗る量が少ないようです」と言っていますが、そうではないことを、古江先生らが明らかにしたってことになりますね。

 プロトピック市販後の2004年の再調査報告では、コントロール不良群は19%から6%に減りました。厳しい基準でも50%→18%です。

 

Furue20041 

 しかしまだ、患者全体の6%ないし18%は、ステロイドに加えプロトピックを駆使しても「コントロール不良」であるわけです。これらの患者の多くが「ステロイド依存」に陥っていると考えられます。塗っても効かないわけですからね。それも、「標準治療」を6ヶ月間続けたのにも関わらず、です。  

 わたしは、「標準治療推進」の意義を否定するつもりはありません。全国均質に、どこでも同じような保険診療が受けられる体制を整えることは、とても有意義です。患者の安心につながります。 

 わたしの主張は、「標準治療」に、コントロール不良な患者においては、患者がステロイド依存に陥っているのかもしれない、という観点を加えよ、ということです。 

 なぜこの意見が通らないのか、とても不思議です。 

 コントロール不良群への対応を考えることなく、「標準治療」を推進するということは、コントロール不良な患者を見捨てる、無視するとうことにほかなりません。存在するものを「存在しない」と言い張ることです。なおかつ「そのような患者たちは標準治療に従わなかったから湿疹が治まらないのだろう」という、世間の誤解を助長することです。

 なぜ、 
現在のガイドラインに基づいた治療で、良好にコントロールされるのは、判定基準にもよりますが、82%~94%です。標準治療でうまくいかない人もいます。うまくいかない原因の一つとして、ステロイド依存に陥ってしまってる場合があり、そのようなケースでは、もはやステロイド外用剤は有効ではありません。その場合は離脱しかありません。様々な薬剤や手法を駆使して離脱に向けてサポートしますので、大変ですが頑張ってください。

と言えないのでしょうか?

その上で、
あなたの皮疹やステロイド外用剤への反応を注意深く確認して、ステロイド依存に陥らないように気をつけていきますので、あまたの場合はまずステロイド外用剤を用いた標準治療から始めましょう。

と言うのが、正しいステロイド外用剤を用いた標準治療であると、わたしは考えます。

 さて、日本アレルギー友の会と江藤先生のコラボの動画を、別の観点から見直してみましょう。どういう観点かというと、なぜ、この江藤先生のパフォーマンスに、友の会の患者たちが、魅了されてしまったのか、という観点です。 

 1FTU(finger tube unit)の塗り方を「極意」と言っていますが、こんな、チューブから出した軟膏の塗り方・伸ばし方を講釈することが、アトピー治療の極意なんでしょうか? じゃあ、そもそもそれまで患者は、軟膏をどうやって塗っていたんですか???って疑問は、普通の感性のひとなら抱くはずです。 

 わたしが、このパフォーマンスに一番似ている、と感じたのは、化粧品の対面販売です。男性のかたはご存知ないかもしれませんが、女性の化粧品と言うのは、非常に細かく、塗り方や量、順番が決められています。そして、「こんなに細かく使い方を指導してもらえる化粧品と言うのは、きっとすごい効果があるに違いない」と思わせるわけです。 

 また、お茶の作法にのっとってお茶を頂くと、心が落ち着くのにも似ていると思います。「これが正しい作法(方法)だ」と言われて、それに従うことは安心感につながります。自分で考えなくてもよくて楽ですからね。 

 マインドコントロの一手法と考えることもできると思います。「軟膏の塗り方」という単純な作業にルールを課すことによって、「しつけ」をするわけです。
 しつけ的な手法(Wikipedia「マインドコントロール」より)

 マインドコントロルの手法として特に著なのは、さまざまな局面にしての膨大な規則をえて、それらにうように仕向け、時にはその理由を知る事や考える事を禁止し、その通りに行動すれば非常に賞し、僅かでも外れればしく罰して、次第にその規則に無意識にうように「しつける(犬に芸をえるように仕む)」事である。


 また「塗り方を指導する」というのは、患者の肌にじかに触ることなので、スキンシップの手法でもあります。「触ってもらう」ことで感激する患者はけっこう多いです。とくに湿疹が強くて、皆から汚いとみられてるのではないかと引け目を感じている時期に、担当医が患部を「触って診てくれる、塗り方を指導してくれる」というのは、それだけでころっと信頼を寄せてしまう患者は多いでしょう。江藤先生は、巧みですね。 

 ただし、怠け者ですね。古江先生らの報告にあるような「コントロール不良群」の患者は、当然江藤先生も経験なさっているでしょうが、それをについて考えたり調べたりなさったりはしないようです。そういう手のかかりそうな患者を診ようとは思わないんでしょうね。まあ、怠け者だから患者対応術が巧みになる、って面はあるんでしょうね、きっと



moto_tclinic at 14:12│Comments(0)TrackBack(0)