読売新聞2011年4月26日の記事中の古江増隆先生のコメントの嘘?(1)「自然治癒」のメカニズム

読売新聞2011年4月26日の記事中の古江増隆先生のコメントの嘘?(2)


(続き→こちらから)
 
 
ステロイドが徐果を失う」というのは、依存性抵抗性のはなしです。中止してリバウンドを生じなければ抵抗性だし、(http://blog.m3.com/steroidwithdrawal/20091021/9)

リバウンドを生じれば依存性です。どちらも確立された医学的根のある話です。古江先生ら標準治療推進派にとっては都合のい話なので、九大皮膚科のホムペジには一切記されていませんが、否定もされていません。否定したら「」をついたことになりますからね。

 ・・ていうか、野村記者、20日の「続・アトピ性皮膚炎(2)知らずに副作用」http://megalodon.jp/2011-0426-1137-34/www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=39692で、ステロイドによる酒さ皮膚炎について書いてるじゃん。酒さ皮膚炎って、顔面に生じたステロイド外用による依存のことですよ。酒さ様皮膚炎というのは、ステロイドが最初は効くが、だんだん効かなくなってきて生じます。さすがに、これを否定する皮膚科医は日本全国ひとりもいないと思いますが・・。議論(というか標準治療推進派の皮膚科医とわたしたち脱ステ医の見解が異なる点)は、顔や腋・股間などだけでなく、躯幹や四肢など、全身の皮膚において「ステロイド依存」現象が起きるのか起きないのか?です()。この点からだけでも、使っているステロイドが徐果を失い、よりいものが必要となることはありませんのくだりが、古江先生の言葉そのままと解釈するのは、おかしいことがわかります。 

 野村記者は、直観・思い込みが強いタイプの記者なのでしょう。はじめに野村記者の文章を読んだとき、「これはアトピー患者が記したのではないだろうか?」と思いました。患者というのは、自分の個人的体験が基礎となるので、どうしても見解が偏りがちになるからです。しかし、そうではなさそうです。

 直観と言うのは、これはこれで、ひとつの資質であり、大当たりすればスクープをものに出来る可能性がありますが、医療記事を書くにあたっては、極力排除されるべきです。

 ふたたび、野村記者にお願いします。二度とアトピーの取材をなさらないでください。あなたにはあなたの資質に応じた、ほかの分野がきっとあるでしょう。思い込みの結果、情報をゆがめて発信し、これ以上患者の混乱を深めることはやめてください。

 あと、これは野村記者の「思い込み」とは関係ない話ですが・・「15%」の数字についてです。この数字については、古江先生らの2003年の論文http://blog.m3.com/steroidwithdrawal/20091022/_2000_1/

あたりが根拠と思われますが(2003年の論文では「コントロール不良は19%で、「軽症」「中等症」の比率も異なるので、ほかのデータがあるのかもしれません。しかし15%と19%ならだいたい似た値です。)、

http://blog.m3.com/steroidwithdrawal/20091022/_2000_/で記したように、何をもって「コントロール良好」「コントロール不良」とするかで、%は変わってきます。基準の取り方を見直せば、50%が「コントロール不良」です。

 また「大人の場合、患者の1割が何もせずに自然に治ります」の根拠もあやしいです。そもそも、「何もしない」なら、皮膚科にも受診しないでしょうから、把握・集計のしようがないではないですか。また、古江先生は「標準治療」をなさっているはずなので、成人発症の来院患者の一定数を、ステロイド外用剤を使わずに、一定期間フォローしてみた経験から、というわけでもないと思います。仮にそのような研究があったとしても、それは「成人患者のうち、病院を受診した群」についての集計なので、成人患者で何もしなかった全体を代表してはいません

 「1割くらいではないか」という古江先生の想像を、野村記者が根拠がある数字であるかのように記事にしてしまったということでしょうか?ほかに可能性を思い付きません。

 ちなみに、いわゆる「脱ステロイド療法」で、ステロイド外用中の患者を離脱させた場合の、半年~一年くらいでの改善率は、1993年の玉置医師の報告によれば、69%くらいでした(http://blog.m3.com/steroidwithdrawal/20091022/_2000_1)。しかし、これは、ステロイドを外用していた患者を離脱させたはなしなので、大人のアトピー患者を「何もせず」に一定期間経過観察したはなしとは言えません。

 ほんとに、この「1割」って、どこから出てきた数字なのだろう?・・なんだか気味が悪いです。

  (注)youtubeupした動画http://www.youtube.com/watch?v=FD-OaiFDKpAの冒頭部分で、氷嚢でほてりを冷やしている患者を診て、「顔面の酒さ様皮膚炎と同じ病態が全身におきている」と判断するかしないかってことです。動画の患者さんの解説はこちら →http://blog.m3.com/steroidwithdrawal/20100605/1997_/ ・・素人目にだって、これ「普通のアトピーの悪化じゃない」ことくらい、わかるでしょ?これを「アトピーの悪化だ、リバウンドではない」と言い張るのが「標準治療」の立場です。


moto_tclinic at 17:12│Comments(0)TrackBack(0)