アメリカ皮膚科学会雑誌(JAAD)にステロイド依存の総説が掲載されますケース7の方の二年半後

PRP療法は真皮繊維芽細胞に作用することで炎症を軽減させてもいるのかもしれない



PRP(多血小板血漿)療法については、前にも記しました(→こちら)が、2例、追加の写真を提示します。
若い女性の首の皮膚です。

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治療前は、やや湿疹も出ているので、これを差し引いて考えなければいけませんが、治療後は年齢相応のみずみずしさが回復しているのが解ります。


次は別の方のおでこの皺です。

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無くなるところまではいきませんが、くっきりしていた横皺が、浅くなってきています。
どちらも一回施術のみです。


この2例の経過写真を見直していて、ちょっと気が付いたことがあります。それはPRP治療前後で、炎症(湿疹)がやや軽くなっていることです。


これは実はまったく理屈に合わない話でもなくて、以前「ステロイド(コルチゾール)を産生する臓器は、副腎だけではない。脳と皮膚も産生する。」という記事を記しました(→こちら)が、皮膚を構成する細胞の中でも、真皮の繊維芽細胞もコルチゾールを産生します(→Cultured Human Dermal Fibroblasts do Produce Cortisol)。

「ステロイド依存(リバウンド)というのは、大量長期のステロイド外用剤の使用によって、皮膚がステロイド産生という自己調節機能を無くしてしまった結果ではないか?」という仮説を以前記しました(→こちら)。PRP療法と言うのは、血小板の放出する成長因子によって繊維芽細胞が刺激されてコラーゲンを産生して、老化したりステロイドによって萎縮した皮膚の回復を図る施術ですが、真皮繊維芽細胞を刺激活性化すると言うことは、そのコルチゾール産生能の回復にも働いている可能性はあります。
真皮で繊維芽細胞のコルチゾール産生が回復すれば、真皮を場としたリンパ球性の炎症は低下するでしょう。逆に言うと、ステロイド依存(リバウンド)状態での、皮膚(真皮)での炎症の起き易さは、真皮繊維芽細胞のコルチゾール自己産生能が低下してしまっていたためではないか?と説明できます。


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紫色(Fibriblast)が繊維芽細胞。間質でコラーゲンを産生すると共に、ステロイド(コルチゾール)をも産生して、真皮における炎症の強さを調節していると考えられる。


ちなみに、皮膚を構成する細胞のうち、メラノサイトもコルチゾールを産生します(→CRH stimulation of corticosteroids production in melanocytes is mediated by ACTH)。メラノサイトのコルチゾール産生は、副腎と同じく脳下垂体由来のACTHの調節を受けるようであり、ストレスによって表皮が萎縮して湿疹が悪化するのは、たぶんこの系が関与しています。(真皮繊維芽細胞のコルチゾール産生はACTHの調節を受けません)。


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メラノサイトは表皮の基底層にあり、表皮細胞(Keratinocyte)に枝を伸ばしてメラニンを供給しています。それと同時に、ステロイド(コルチゾール)産生も行い、表皮細胞の寿命、すなわち表皮の厚さをも調節していると考えられる。


メラノサイトの産生するステロイドが表皮の厚さを調節しており、大量長期のステロイド外用剤の使用がこれを抑制する結果がステロイド依存(リバウンド)であると考えると、紫外線療法がステロイド依存からの回復に有効な理由であることの説明にもなります。

以前、ステロイド依存のメカニズムとして、表皮細胞そのもののステロイド(コルチゾール)産生が抑制されるためではないか?という仮説を記しました(→こちら)が、むしろ、メラノサイトや繊維芽細胞のステロイド産生の破綻によるのかもしれません。
もしそうであるとすれば、PRP療法と言うのは、紫外線療法がメラノサイトのステロイド産生系の回復に働くのと同様に、真皮繊維芽細胞のステロイド産生系の回復を介して、リバウンドや過敏性亢進時期の真皮性炎症を抑えてくれるのかもしれません。

これはちょっと興味深いことであるので検証してみようと思います。リバウンド期の患者の片腕にPRP療法を行い、非施術側と比べてみればはっきりするでしょう。協力してくれる患者が見つかって結果が出たら、またブログで報告します。


注) 現在、私のクリニック(完全予約制、美容外科的施術のみでアトピー性皮膚炎の診療は行っていません)は予約7ヶ月待ちです。毎月1日に7ヶ月先の1ヶ月分(2月1日なら9月分)の御予約を受け付けるのですが、2日の午前中にはほぼ全枠埋まる状況です。もしもこの記事を読んで、PRP療法を受けてみたいという患者さんいらっしゃっても、なかなか予約取れないかもしれません。私一人でやっている小さなクリニックなので能力に限りがあります。悪しからず御了承ください。

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 クロフィブラート軟膏には弱い抗炎症作用があり、ステロイドを使わずに皮膚炎を少しでも抑えたいという方に向いています。論文になっていますし作製も容易なので、出来ればかかりつけのお医者さんに処方をお願いしてみてください。



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