分子量10万ダルトン付近のヒアルロン酸は血管新生を抑制するステロイド外用がアトピー性皮膚炎を難治化させるメカニズム

強力ネオミノファーゲンCの作用機序

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 最近、英語版ブログを始めたのですが(→こちら)、その理由は、元々ヒアルプロテクトのオンラインショップの海外向け英語版を立ち上げるにあたって、FAQを作る必要性があったからでした。
 最初は箇条書きのような簡単なFAQを書く予定だったのですが、あれもこれもと記しているうちに、これはブログの形で別に独立してリリースしたほうが良いと思い立ちました。
 また、英語版ブログのほうでは、コメント欄を開放しています。これは、私の英語力で、正しく情報が伝わるか不安であったので、理解しにくい部分を指摘してもらおうという目的からです。また、文化や医療環境の違いから来る誤解をも、なるべく解いていきたいという意向もあります。日本語ブログのコメント欄を開放していないのにとお叱りを受けそうですが、趣旨を御了解ください。
 
 英語版ブログに書きながら、「そういえばこれ、日本語ブログでは書いてなかったな。」という、小さな発見をすることもあります。強力ネオミノファーゲンCの作用機序はその一つで、せっかくなので、日本語ブログでも解説しておこうと考えました。一種の逆輸入です。
 
 強力ネオミノファーゲンC(以下強ミノ)についてなぜ英語ブログで詳述する必要があるかというと、これは日本で開発された古い薬剤で、欧米では販売されていないからです。なおかつ、日本では、脱ステロイド時のリバウンドを軽減するために用いられることが多いからです。
 
 
 英語版ブログで、脱ステロイド時のリバウンドを軽減する方法として、ステロイドの注射という裏技がある、ということを解説したのですが(→こちら、日本語ブログでの解説記事は→こちら)、「ほかに方法は無いのか?」みたいなコメントが寄せられ、「効果は弱いが、強ミノを注射するという方法もある」と答えました。それで、強ミノとはどんな薬なのか?を解説する必要が生じました。
 
 強ミノは、注射を受けたことがある方も多いと思いますが、透明な20mlの静脈注射剤です。
  
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 日本を中心としたアジア圏でのみ販売されています。理由は・・単に製薬会社の規模や各国への進出のコストと採算性の問題だと思います。このブログで何度も記していますが、薬剤と言うのは、単純に医学的に優れているから薬剤なのではありません。良い薬でも採算が取れなければ企業は放棄しますし、その逆もあります。
 
 さて、そのメカニズムですが、古い薬で作用も穏やかなので、あまり認識せずに使用している先生も多いのではないかと考えますが、これはステロイドの分解・不活性化を担う11β-OHSDという酵素を阻害するという点にあります。 
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1990年のLancet誌で論文が掲載されました。
 
Potentiation of hydrocortisone activity in skin by glycerrhetinic acid. Greaves MW. Lancet. 1990 Oct 6;336(8719):876.
 
 要するに、強ミノを注射すると言うことは、ステロイドを注射するわけではないが、患者自身が生理的に分泌しているステロイドの分解を抑制することで、結果的にステロイドの効果を増強している、ということになります。
 
 この11β-OHSDという酵素、免疫組織学的に分布を見ると、表皮細胞に多いのです。表皮細胞はステロイドを分解・不活化する高い能力を本来的には持っている、ということです。これを阻害するわけですから、強ミノの注射と言うのは、ステロイドの注射というよりは、ステロイドの外用に近いと、私は考えます。 ←そんな単純な話でも無さそうです(こちら
 
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 湿疹患者の皮膚の11β-OHSDの分布(黒く染まった部)。表皮細胞に11β-OHSDが多いことが解る。

 
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 Beclomethasone dipropionate と hydrocortisone acetateは共にステロイド外用剤。弱いステロイドであるhydrocortisoneに強ミノの主成分であるglycyrrhetinic acidを加えて、皮膚に外用すると、ステロイドの作用である血管収縮が増強されることが示されている。

 
 それでは、強ミノで、ステロイド外用剤のような依存現象(表皮バリア機能破壊によるリバウンド)が起きるかと言うと、そんな報告は無いし、聞いたこともありません。
 これは結局、強ミノが「静脈注射」という投与法に限定されているからだろうと私は思います。注射と言うのは、患者が自分で毎日のように長期連用することができませんからね。週一回~月一回などのペースで受診のたびに強ミノの注射を受けるという方が多いと思いますが、結果的に、プロアクティブ療法を受けているのに近いと思われます。
 
 以上御参考までに。
 

 私が作成した「ヒアルプロテクト」のショップは(下の画像をクリック)。
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