痒疹タイプのアトピー性皮膚炎にはステロイドよりもUVB(エキシマレーザー)のほうが効くクロフィブラート軟膏のその後

中間分子量のヒアルロン酸外用はマウスの実験的アトピー性皮膚炎を抑える



表題は、   

Hyaluronic acid targets CD44 and inhibits Fc epsilonRI signaling involving PKCdelta, Rac1, ROS, and MAPK to exert anti-allergic effect.
Kim Y, et al Mol Immunol. 2008 May;45(9):2537-47.


 
に出てくる実験結果です。DNFBという物質を外用するとアトピー性皮膚炎様の症状を示してくるネズミがいるのですが、これにヒアルロン酸(CD44と結合する中間分子量のヒアルロン酸)を外用してやると、皮膚炎が抑えられました。 
 この論文の著者はERKという酵素をヒアルロン酸の作用点の一つとして注目しているのですが、この酵素の阻害剤であるPD98059という物質を併用しても同様に皮膚炎が抑えられました。ただし抑制の程度はヒアルロン酸よりも弱いようなので、仮にERKが作用点の一つであるとしても、他にも作用点はありそうです。
 
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 下は上のネズミの血中IgEを測定した結果です。皮膚炎と同様、ヒアルロン酸外用すると抑制されました(上の「DNFB」が下の「mock」に当たります)。  
   
 
ということは、中間分子量ヒアルロン酸、ステロイドによる皮膚萎縮を防止する以上に、アトピー性皮膚炎自体を抑える効果も期待していいのかもしれません。また、ステロイドを使っていないアトピーの人が使っても意味あるかもです。 
   
 この論文では、ネズミの実験とは別に、培養細胞を用いた多くの実験結果も報告されています。まとめると下図のようなことで、肥満細胞(IgEレセプターを持ちヒスタミンを放出する細胞)は、ヒアルロン酸(HA)に反応してPKCほかの酵素に働き、結果としてヒスタミン等の放出を妨げる、といった内容です。
  
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 ところで、中間分子量のヒアルロン酸が、CD44を介して免疫細胞に働きかけ、サイトカインを放出するなど、何らかの影響を及ぼしているようだ、という実験結果は1990年代頃からありました。
 A crucial role for CD44 in inflammation.Puré E, et al Trends Mol Med. 2001 May;7(5):213-21.
 には、下図のようにまとめられています。
    
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 この「中間分子量のヒアルロン酸は、CD44を介して免疫系に何らかの働きかけを行っている」という各種実験結果が、どうも「ヒアルロン酸はアレルギーを悪化させる」というネット情報として一時期拡がったようです。
 「
近年ではヒアルロン酸はアレルギー物質の毒性を劇的に強めるアレルギー誘発物質であるとする研究結果が世界各地の研究機関から一斉に発表されており」という文章をコピペして検索かけてみてください。424件ヒットします。オリジナルは2010年頃のようで、どうも、wikipediaの「ヒアルロン酸」の項目に誰かが記した文章が発端のようです(現在はwikipediaにはこの文章は残っていません)。 
 
 私が作製した中間分子量ヒアルロン酸化粧水(注)の評判・評価に関わる話なので、しっかりと釘を刺しておきたいのですが、ヒアルロン酸は免疫細胞ほかCD44を持つ細胞に作用することが判って、基礎研究が続けられていますが、実際に実験動物あるいは健常人・患者において、ヒアルロン酸の外用がアレルギー促進的に働いた、という報告はありません。むしろ、上記のKim先生の報告に見られるように、動物実験レベルでは、アトピー性皮膚炎を抑えます。
「培養細胞でサイトカインを放出させる=アレルギーを誘発する」ではないです。各種サイトカイン放出の結果、むしろアレルギー抑制的に働いているのかもしれません。ここのところ誤解なさらないでください。
 (注)製品名を明示すると、ブログ記事が薬事法第86条(未承認医薬品の広告禁止)に抵触するおそれがあるので、製品名を伏して記事を書いています。関心のあるかたは、お手数ですが検索して探してください。現在のところ中間分子量ヒアルロン酸を使用した化粧 品は日本では他にありません。
 ところで、ちょっとびっくりしたことがあります。

 
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 これは、Bionectクリームといって、0.2%の「低分子」ヒアルロン酸含有クリームなのですが、この低分子ヒアルロン酸に何を用いているかというと、HYALASTINEという商品名のヒアルロン酸原末です。HYALASTINEの分子量はどのくらいのものなのだろう?と調べてみたら、http://www.google.com/patents/EP0138572B1?cl=en
に記載があって、5万~10万です。まさに、私が作製した中間分子量ヒアルロン酸化粧水と同じ分画です・・。
 
 効能効果は、
  
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赤み・炎症・皮膚の刺激に伴う不快感を抑えます。この低分子量のヒアルロン酸は炎症の治癒を促進するための最適な環境を提供します」と、あります。・・いや、これはほんとびっくりしました。当たり前とはいえ、まさに私が作製した中間分子量ヒアルロン酸化粧水の使用感と同じです。
 私が作製した中間分子量ヒアルロン酸化粧水は2%なので、Bionect10倍濃度ですが、Bionectが有効であるならば、私が作製した中間分子量ヒアルロン酸化粧水、水で10倍くらいに薄めても同等かもです。もっとも、「ステロイド外用剤による表皮萎縮を防止する」Barnesの実験に用いられているのは2%ですから、その目的で使うには、2%が適当と言えます。 
 
 Bionect を販売しているのはinnocutisというアメリカの製薬会社で、設立が2010年です(
こちら)から、たぶん、誰かが私と同じように、この分画のヒアルロン酸の効能に注目して発売したのでしょう。 
 
 ちなみに、Bionectの価格は30gで$100前後です(
こちら)。私が作製した中間分子量ヒアルロン酸化粧水の良心的価格が証明されました(^^;。



 クロフィブラート軟膏の処方についてはこちら(下の画像をクリック)。  

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 クロフィブラート軟膏には弱い抗炎症作用があり、ステロイドを使わずに皮膚炎を少しでも抑えたいという方に向いています。論文になっていますし作製も容易なので、出来ればかかりつけのお医者さんに処方をお願いしてみてください。



moto_tclinic at 15:14│Comments(0)TrackBack(0)