日本皮膚科学会に民事訴訟を起こしてみたらどうだろうか?古江論文は「19%でコントロール不良」の原因は「ステロイド外用量が少なかったため」と考察しているか?

片岡葉子先生によると青木敏之先生の脱ステロイド治療の成功率は100人に一人だったらしい



 以前にも取り上げた「アトピー性皮膚炎ドットコム」という、ノバルティス製薬が運営しているサイトがあり、その「アトピー対談」というコーナーに、大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター(旧羽曳野病院)皮膚科部長の片岡葉子先生が出演していらっしゃいました(→こちら)。
 そこからの抜粋です。
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 1996年当時の羽曳野病院の皮膚科部長は、現「あおきクリニック・かゆみ研究所」(→こちら)の青木敏之先生です。
 へーえ、100人に一人だったんですか・・ずいぶん低かったんですね。びっくりしました。
  
 青木先生については、以前本ブログでも紹介しています(→こちら) 
 青木先生の治療方針はクリニックのホームページの「症例紹介」を見るとよく解ります(→こちら)。
 「1.ステロイド軟膏副作用からの回復例」は、ステロイド皮膚症(依存)からの漸減法による回復例で、「2.ステロイド外用なしで経過をみた乳児アトピー性皮膚炎の例」は、親の希望に応じてステロイドを使用せずに治療してよくなった例、「3.無ステロイド治療で重症化した乳児アトピー性皮膚炎」は、ステロイド外用を薦めた例です(ステロイドを使用していないから当然依存例ではない)。
 青木先生のこの治療方針は、私の知る限り、1996年当時から、まったく変わっていません。とにかくバランスの取れた先生で、ある一定のところまでは、患者の意向を最大限尊重して付き合い、青木先生の基準において「積極的な医療介入が必要」と考えたとき(3.のような例)には、ステロイド外用を薦める、そういうスタンスと私は理解しています。
 その青木先生の、「脱ステロイド治療」の成功率は、片岡先生によれば、「100人に一人」だったそうです。私にはちょっと信じられません。
 だって、「脱ステロイド軟膏療法」を初めて皮膚科雑誌に報告した玉置先生が「改善以上」69%ですよ(→こちら
 まして、青木先生の場合、ある段階からは、積極的にステロイド外用を薦める、という方針です。青木先生が「脱ステロイド」を許した患者の改善率は、普通の脱ステ医の改善率よりもむしろ高いはずです。
 私は、今回、20例の非ステ治療希望の患者(一定期間以上ステロイドを使っていない)を募って、クロフィブラート軟膏の試用を試みましたが、少なくとも7~8割は良い結果が出ています。脱ステロイドの医師による治療の奏効率というのは、玉置先生以外の方の報告を見ても、だいたいそんなものです。
 まして、「何年脱ステロイド治療を続けても改善せず、不登校になったり、仕事に就けなかったり、中には非常に残念なことですが自殺してしまったり」・・そりゃ、人間ですから、そういう例もあるかもしれませんが、青木先生の患者の多くが、そんな悲惨な目に陥ったとは思えません。私が今回集めたクロフィブラートの20例の患者たちのプロファイルを見ても、ほとんどは辛い中で、仕事にも就き、家庭も持っています。ステロイド外用治療を行っている患者20人を集めて比較しても、おそらく年収や結婚率に差は無いでしょう。脱ステロイドの患者たちを、根拠も無く、勝手に不幸なイメージで塗り固めるのは止めて欲しいです。
 一応、アトピー性皮膚炎患者のQOLについての調査結果の論文を挙げて置きます(→こちら)。アトピー性皮膚炎の患者は、健常人に比べると有意にQOLが低いとは言えますが、ステロイド忌避の患者がそうでない患者に比べてQOLが有意に低いかというと、そうでもありません。 
 要は、治らない限りは、ステロイド塗ってても塗らなくても、QOLは健常者に比べれば低くて両者に有意差は無いよ、ってことです・・余計なお世話みたいな論文ですが。ちなみに著者は女子医大の川島先生。 
   
  青木先生は、1999年に羽曳野病院を退官してそのあと片岡先生が部長を受け継ぎました。ですから、片岡先生が青木先生の下にいたのは、96年から99年までの3年間です。青木先生は退官前は副院長で、管理職としても忙しかったはずですから、片岡先生ほか部下の皮膚科医たち(当時羽曳野病院は、青木先生が副院長を務めていた関係もあったのでしょう、皮膚科常勤医数名が勤務する大所帯でした)が、青木先生の「治療方針」をうまく運営できていなかったのかもしれません。それで片岡先生の「脱ステロイド」に対する印象が非常に悪いのかもしれませんね。それで上記のようなコメントに至ったということは考えられます。
 少なくとも、片岡先生は、「脱ステロイド療法」を自ら実践して、その結果、やはりステロイド外用治療のほうが良い、と結論付けた方ではないです。青木先生の下で3年間働いた方です。
 「2000年に入る少し前」から治療方針が変わったのは、単に、ご自身が部長になって、自由に出来るようになったというだけでしょう。
 
 片岡先生の対談で、もうひとつ苦言申し上げたい点があります。
  
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 私の知る限りでは、片岡先生が行った研究は、1)保湿剤を使ってスキンケアを行った児、と、2)保湿剤を使わなかった児、との比較です。後者では、食物アレルギーというかプリックテストの陽性率が高かった(→こちら、あるいはこちら)というものです。
 ステロイド外用剤を使用すると、食物アレルギーの発症が抑えられるという話ではありません。
 
 もし、どこかで、片岡先生が上記のような講演をなさったら、「先生のおっしゃる食物アレルギーの発症を抑えるスキンケアというのは、保湿剤のことですか?それともステロイド外用剤のことですか?」と聞いてみてください。
 大きな違いですからね。この研究の結果自体は、わたしは非常に評価しますが、こういった一般の人向けの製薬会社のサイトで誤解を招くような対談はいただけませんね。


moto_tclinic at 09:19│Comments(0)TrackBack(0)