クロフィブラート軟膏のパイロットスタディ・ケース11、12クロフィブラート軟膏の将来的展望など

クロフィブラート軟膏パイロットスタディの中間報告(n=12)

 
 これまでの12例のデータを中間集計してみました。
 12例の内訳は、白色ワセリン6例(男4、女2、平均年齢31.5才)、クロフィブラート軟膏6例(男3、女3、平均年齢31.8才)です。
 まず皮疹の評価ですが、日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎重症度分類により点数化しました(詳細は→こちら)。
 クロフィブラート軟膏外用にて、有意に重症度の低下を認めました(Student-t の片側検定、以下同じです)。 
 
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  次に患者側からの評価です。患者VASとは、「皮疹のまったく出ていない状態を0、最悪の状態を100とイメージして、現在の状態を数値化してみてください」という問いに対する答えです。これもクロフィブラート軟膏において有意に低下です。 
 
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 TARCも同じです。クロフィブラート軟膏において低下が有意です。 
 
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※TARCについて、白色ワセリンでは平均値が1024.8→368.5、クロフィブラート軟膏では1379.0→658.2と、似たように低下しているが、なぜクロフィブラート軟膏だけ低下が有意なのか?と疑問に思われる方がいるかもしれないので、元データを付しておきます。 
  
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    注:TARC正常値は<450、検出限界は125です。
 
 白色ワセリンではcase10のかたがお一人だけ、しかもたいへん大きく数値が低下したために、単純平均が低下しました。しかし全体的には低下傾向とは言えません。クロフィブラートでは、全体的に低下傾向です。それでp値を計算すると、クロフィブラート軟膏においては、統計的に有意に低下だが、白色ワセリンでは統計的に有意ではない(case10はたまたま何かの理由で低下した)、となります。 
 
 IgEについては、両群とも有意差が出ませんでした。 
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 副作用など有害事象はありませんでした。
 とりあえず、クロフィブラート軟膏の短期的(2週間)な効果は、12例終了時点で確認できました。このあと、最大の関心事である、クロフィブラート軟膏は長期連用によってリバウンドなく皮疹を抑えることができるのか?あるいは、ステロイド外用剤依存後のリバウンドの治療(自然回復のショートカット)となりうるのか?の確認に入るわけです。
 
 まずは、4週間の治験の終了後、「クロフィブラートが奏功した」と判断された患者のかたから、一年間の長期試用にご協力いただける方を募ります。その方々にまず、2週間休薬していただき、休薬後の再燃の有無を確認します。
 現在、この2週間の休薬後の確認が済んだ方が、3名いらっしゃいます。ケース1とケース2とケース7です。
 ケース1の方は、依存・リバウンドではなく、何らかの環境要因が疑われる方で、休薬後3日ほどで再燃しました。ケース2の方は、依存・リバウンドが疑われるが、比較的軽症の方で、再燃はありませんでした。ケース7の方は、明らかな依存・リバウンドで、それも長期間遷延している方でした。休薬一週間目くらいから再燃し、2週間目は、治験前ほどではありませんが、休薬直後よりも皮疹が出ています。
 以前から、繰り返し記していますが、私はアトピー性皮膚炎において、すべての薬(外用薬)がリバウンドを起こすとは考えません。そもそも、ステロイド外用剤のようなリバウンドを起こす薬剤のほうが珍しいのです。
 また、ステロイド外用剤によるリバウンドは、アトピー性皮膚炎において生じやすいですが、アトピー性皮膚炎に限ったことではありません。1970年代にKligmanが記述した通りです。ですから、アトピー性皮膚炎でも、リバウンドは起こさず炎症を鎮静化してくれる薬剤が存在するはずだと思うのです。
 クロフィブラート軟膏が、ステロイドほどには、炎症を抑える力が強くなくても、リバウンドを起こさない安全な外用剤であってくれるといいなあ、と考えます。
 
 また、このブログをご覧になっていらっしゃるアトピー性皮膚炎の診療にたずさっていらっしゃる臨床医の方、上記のようにクロフィブラート軟膏の短期的効果は、中間報告(n=12)ではありますが、既に統計的に有意差確認もできましたので、診療にご活用いただいても良いのではないかと考えます。自家製軟膏の臨床使用についての問題点と対処については先日考察を済ませました(→こちら)。作製方法などについてのお問い合わせにはいつでも応じます。
 私も数名の患者さんで、長期使用の効果を確認していきますが、できれば、ほかの先生方も、各自で検討していただければと思います。それぞれの立場から知恵を出し合って、将来のより良い皮膚科診療に役立てればと願います。
 
 また、治験に参加されて、クロフィブラート軟膏が奏功しなかった患者の方については、今後も、ほかの方法(PPARγの試用など)を工夫していきます。がっかりせずに、ほかの道を一緒に探していきましょう。  


moto_tclinic at 11:42│Comments(0)TrackBack(0)