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「本当は怖い『脱ステロイド』:アトピー性皮膚炎の治療」というサイトについて(3)



 「ステロイド外用剤はリバウンドしない」
http://blogs.yahoo.co.jp/d_d_e8e/1740378.html
http://blogs.yahoo.co.jp/d_d_e8e/1822726.html
http://blogs.yahoo.co.jp/d_d_e8e/1895843.html

という記事もありました。 
 
13a 
 
 だそうです。
 私の意見は、「ステロイド外用剤のウソ・ホントの嘘」
http://steroidwithdrawal.doorblog.jp/archives/876678.html
で記した通りなのですが、ここでは、製薬会社が作成した、というか、原田先生、川島先生が起草した、医学的に間違った文章の患者向けのパンフレットを鵜呑みにして、確認しようとせずにHPなどで二次発信している医師たちを問題として取り上げたのですが、このブログ管理者は、明確に「ステロイド外用剤によってリバウンドは生じない」と記しています。
 ここから考えると、この方は、ひょっとしたら、医師ではないのかもしれない、とも思いました。医師であれば、さすがにここまではっきりとした過ちは犯さないと思うからです。 
 
13b 
 この先生のイメージする専門書(成書)がどんな本なのか測りかねますが、たとえば、
Text of Atopic Dermatitis
には、

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Rebound flare after the discontinuation of topical corticosteroids is not uncommon. It occurs both in the context of an underlying skin disease, such as AD, and also in normal skin after prolonged application of topical corticosteroids.

ステロイド外用剤中止後のリバウンド悪化はまれなものではない。それ(リバウンド)はアトピー性皮膚炎のような元々皮膚疾患がある場合にも起きるし、健常皮膚においても、ステロイド長期外用後には生じる。

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とあります。
無題_1~1 (画像または→こちらをクリック)

 このブログ管理者は、本気で「専門書(成書)に書かれていない」と信じているわけではなさそうです。リバウンドに関する他の記事を読んでそう感じました。意図的に誤解を招きやすい書き方をしています。
 それは、

http://blogs.yahoo.co.jp/d_d_e8e/1895843.html
にある次のような記述です。 
22c 
 とあります。
 ここを読むと、どうもブログ管理人は、②にあたる報告が、自分で納得できるものが見当たらない、だから②の意味での「リバウンド」は存在しない、と考えていることがわかります。成書(専門書)に「リバウンド」という記述があっても、それはブログ管理人の解釈ではすべて①であるから、認めるにあたらない、というご意見のようです。
 あるいは、この方の主張は、「成書(専門書)にステロイドでリバウンドが起きるとは書いてあるが、それを副作用と分類しているものは見当たらない」ということかもしれません。そりゃそうです。リバウンドというのは、皮疹経過を現す用語であって、副作用の項目として単独で挙げる用語ではないからです。副作用として記されるならば「ステロイド依存(steroid addiction)」あるいは、Rapaport先生によればRed burning skin syndromeの解説としてでしょう。アメリカ皮膚科学会雑誌(JAAD)の2006年1月号のAdverse effects of topical glucocorticosteroids(ステロイド外用剤の副作用)という総説には、「Steroid addiction」が独立した一項目として記されています。http://steroidwithdrawal.doorblog.jp/archives/935925.html
 この方の言うところの①と②の違いは、①はアトピー性皮膚炎の通常の波であり、②は「ステロイド依存」 です。ですから、この方は「自分はステロイド依存が存在するとは思わない」ととおっしゃりたいだけだと思います。
 また、①と②の違いは、 http://steroidwithdrawal.doorblog.jp/archives/900269.htmlで記した「脱ステロイド」と「ステロイド忌避」の違いとイメージ的には同じです。
  
  この方のいうところの②が存在するようだと、なぜ私たちが考えたかというと、以前の記事で引用した西岡先生のエッセイ(→こちら)や、
http://steroidwithdrawal.doorblog.jp/archives/900269.html
のわたしの回想を読んでいただきたいと思います。
 1990年代に、皮膚科医がステロイド依存の問題に気が付き始めたきっかけは、それまでの古典的なアトピー性皮膚炎として教科書に記載されていた皮疹の範疇におさまらない奇妙な皮疹でした。
 全身のステロイド酒さ、というのが、一番近い表現です。
 2000年以降の若い皮膚科医世代は、おそらく、私たちが奇妙に感じた皮疹をも、普通に「アトピー性皮膚炎」と診断するように教わったのでしょう。そうではないんです。
 1991年のNHKの番組についての記事(→こちら)の真ん中あたりに「かなり酷い例、極端な例」としてある写真は、いまでは、どこの皮膚科外来でも、普通にみられるアトピー性皮膚炎の皮疹だと思います。このころはそうではありませんでした。
 こちら(→ここ)の96年11月の写真は、ステロイド依存症ですが(痒疹拡散型)、99年1月の写真は、アトピー性皮膚炎の悪化(潮紅局面型)です。この方のブログの言葉を借りれば、前者は②であり、後者は①です。
http://steroidwithdrawal.doorblog.jp/archives/1205592.html
で示した例も、潮紅局面型です。ステロイド離脱ではありますが、皮疹上は、単なるアトピー性皮膚炎の悪化(①)とも解釈できるものです。この患者は、ステロイド依存に陥っていなかった、何らかの悪化要因暴露が続いていた例かもしれない、それでもステロイド外用剤を増やして対応しきれない患者はいるということです。(この患者は経過から考えると、イソジン消毒療法によく反応しましたから、「ステロイド抵抗性」に陥っていた例とも考えられます)。
 こういった、皮膚科医が、皮疹あるいはその流れを見て、直観的に診断する、あるいは、西岡先生や佐藤先生や私のように、「これまでにはない奇妙な皮疹だ」と気付く、そういった手法・手技を、脱ステロイドを封印することで、皮膚科医は自ら、捨ててしまいました。ブログ管理人がもし皮膚科医であって、「②にあたる納得のいく報告がない」と感じているとしたら、それは、「
自分の皮膚科医としての「眼」は未熟である」、と告白しているようなものです。
 2000年以降、おそらくそのような皮膚科医は増えてきていると思います。私は、それが一番悲しいです。
 
追記:このブログ管理者のかたは、Yahoo知恵袋で、d_d_eleというハンドルネームで、患者の相談にいろいろ答えているようです。
http://my.chiebukuro.yahoo.co.jp/my/myspace_ansdetail.php?writer=d_d_ele
 その回答を読むと、どうもやはり皮膚科医のようです。女性かなあ?と思います。「本当は怖い脱ステロイド」というコピーは「本当は怖いグリム童話」という女性向けの本のパロディだろうからです。 
 13a3

  これに似たフレーズが繰り返し記されています。これは事実として誤りです。嘘を記しているといっても過言ではありません。 
9a2 
  乾癬のステロイド外用剤によるリバウンド現象を知らないのでしょうか?アトピー性皮膚炎のそれよりも、よく知られています。アメリカ皮膚科学会のガイドラインにも記されています。
 http://steroidwithdrawal.doorblog.jp/archives/1083629.html
 皮膚科医であれば、知らないとは言わせません。皮膚科医で知らないなら、よほどの不勉強です。あるいは、嘘をついています。 
7a2 
  これは、皮膚科医(開業医?)としての本音と不安でしょう。
http://steroidwithdrawal.doorblog.jp/archives/1125569.html
で、コメントを寄せていただいた皮膚科医の先生の「危機感」に通じるものがあります。
 以前の記事(→こちら)でも記しましたが、私は、アトピー性皮膚炎は治りうる疾患だが、皮膚科医はこれを治すことはできない、という見解です(注:民間療法なら治せると言っているわけではありません。誤解なきよう)。
 皮膚科医に出来ることは、良質な対症療法です。それに価値を見出す患者が、皮膚科に来ればいいんです。良質な対症療法としての価値を高めるためには、ステロイド外用剤依存や、そこからの離脱の知識・知恵は不可欠です。
 皮膚科医が、ステロイド外用剤を使って、アトピー性皮膚炎を治せるかのような、嘘を発信し続けるのは止めなさい。それは奢りです。
6a2 
  脱ステロイドの意味、ステロイド依存例・抵抗例の存在を認めないことこそが、アトピー性皮膚炎の治療の放棄です。 
5a3 
  気管気管支や腸管など、粘膜においては、Steroid addiction(ステロイド依存)は生じません。粘膜と皮膚との構造の違いによるのでしょう。
1b2 
  「完全に外用をやめられる人もいる」が「脱ステロイドとは違う」という点は同意です。わたしは、「脱ステロイド」は、依存に陥ってしまった人が離脱する場合にのみふさわしい語だと考えます。単に止めるのは「中止」または「忌避」です。
http://steroidwithdrawal.doorblog.jp/archives/900269.html
 最後の一行「標準治療をしたからこそやめられたのです」は詭弁ですね。  



moto_tclinic at 18:26│Comments(0)TrackBack(0)